奥能登の冬の風物詩
どうも、ふぃじこです。
もう、完全に北陸の冬です。太陽を拝めることが少なくなってきました。
気付けば、今年もあと1カ月。
手に入れたものより失ったものの方が多い、1年やったなぁ。
その冬に奥能登で行われるのが、「あえのこと」という伝統行事です。
「あえのこと」は奥能登の珠洲市、輪島市、能登町、穴水町で行われる田の神様に感謝する行事のこと。
12月5日と2月9日の年2回行われ、石川県の地方ニュースでも毎年取り上げられます。
ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
能登の田の神様がそこにいる
「あえのこと」の面白いところは、田の神様が目に前にいるかのように振る舞うことなんです。
「あえ」とは「饗」といわれており、神様を饗応することを表現しています。
この田の神様、目が見えない夫婦の2柱といわれています。
目が見えない為、田んぼへ神様を迎えに行き、自宅に招きます。
その際に、「足元が段になっていますのでお気を付け下さい」などと口に出して話しかけるんです。
自宅に来ていただいた後は、囲炉裏でお茶を用意し、しばし休んで頂きます。
その間にお風呂を沸かし、「お風呂の準備ができました」と声をかけ、神様に入浴して頂きます。
その際も「湯加減は如何ですか?」と話しかけたりして、至れり尽くせりです。
そのあとは料理で接待。ご夫婦なので、2膳用意。
このときも、料理の説明を一品一品行います。食材は当然、地物です。
ここまで徹底していると、本当に目に前で楽しそうに夫婦の神様が召し上がっている姿が目に浮かんできます。
能登の接待は秘密?
ここまで、大雑把に書きましたが、実はこのあえのことの内容は、一軒一軒微妙に異なります。
行事の順番や出す料理が異なるんです。
元々は、能登の各農家がひっそりと行っていた為、隣の家での行事の順序や出している料理を全く知らないということもあるそうです。
料理の秘密
家によって異なる料理ですが、これは各家では意味がきちんとあります。
非常に日本らしいのですが言霊(コトダマ)に影響を受けているんです。
能登にある珠洲市の知り合いに聞いたのは、ある家では蒸し物を出さないらしいです。
それは「蒸し=虫」につながり、農家では嫌われるから。
石川県では「ハチメ」と呼ばれる「メバル」を料理として用意するのは、「メバル=芽張る」で縁起がいい語呂なので、等々、各家で出す料理が異なるのは、各家にとって意味があるそうなんです。
「あえのこと」の裏設定
「あえのこと」は当然、田の神様に感謝を捧げるというのが目的ですが、実は、裏設定(?)というか、別の目的も隠されていたんです。
それは、こどもたちにごちそうを腹いっぱい食べさせること。
どういうことなのか?と言うと、この「あえのこと」は田の神様を接待する神事です。
昔は、神事に使う料理の食材は年貢の対象外として貰うことが出来たそうです。
「あえのこと」の神事が終わったら、お下がりとして、こどもたちにごちそうを食べさせる。
非常に人間臭い、能登の先人の知恵にある意味感動さえ覚えません?
ユネスコの無形文化遺産に登録されている神様に感謝する伝統信仰としての神事を楽しむという一面もあります。
が、こういった神事も裏設定を知っていると、楽しみ方に多様性が生まれませんか?
神事の裏に隠された、こどもを想う能登の想いも感じて貰えればと思います。