ここ何年かで日本各地の芸術祭が注目されるようになりました。
その一つが、2017年に石川県の能登半島で開催された奥能登国際芸術祭。
奥能登国際芸術祭も他の各地域の芸術祭と同様に、地域の資源を活かしたアートにより、地域の再発見と地域つくりを試みる芸術祭でした。
芸術祭と言うと、
芸術そのものが難しい。
芸術の見方を知らないと楽しめないのでは?
芸術のうんちくを学ばないと理解できないのでは?
と考えがち。僕もそんな考えでした。
奥能登国際芸術祭を鑑賞するまでは。
でも、実際に鑑賞してみると、「もう少しみていたいな。」と素の自分が感じる作品に出逢えました。
芸術に対しては、僕自身は苦手意識があったのですが、実際に奥能登国際芸術祭に行ってみると今更ながら、芸術には明確な答えがないことを気付かされました。
また、そのことが不思議とすごく心地よかった。
それはきっと、日常の生活や仕事では、明確な答えや数字を求められることが多いことの対極にあるからなのかなと。
そんな気持ちにしてくれた奥能登国際芸術祭を振り返ってみます。
また、次回はあるの?
と、実は今も鑑賞できる、もご紹介。
奥能登国際芸術祭とは?
奥能登国際芸術祭が開催されたのは、2017年9月3日~10月22日までの50日間。
11の国・地域の39組のアーティストが参加。
総合ディレクターとして、瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクターも務めた北川フラム氏を起用した芸術祭。
奥能登国際芸術祭の開催目的
奥能登国際芸術祭実行委員では
- 会場となる珠洲市の伝統文化、自然、食の魅力を発信。
- 珠洲市民自身が、珠洲市の潜在力を再認識し、プライドと自信を持つ。
- 全国からの鑑賞者、サポーター、珠洲市民が交流し新しいつながりを持つ。
を開催目的としていました。
「さいはての地」珠洲(すず)市で開催
会場となったのは、能登半島先端の石川県珠洲市。
珠洲市内の特定の場所ではなく、珠洲市全域が会場となっていました。
ちなみに、珠洲市は「さいはての地」とも称されます。
これは、本州の先端に位置すること。
本州最小人口の市が珠洲市であることから。
また、2015年公開の永作博美さんが主演の映画「さいはてにて」のロケ地が珠洲市だったことも少なからず影響しています。
鑑賞者数は?
鑑賞者数は、
71,260人(推計):作品鑑賞者68,665人+イベント入場者2,595人。
(奥能登国際芸術祭実行委員会の実施報告より)
全域が会場となった珠洲市の人口は、およそ14,720人。(2018年1月末時点)
珠洲市の人口のおよそ4.8倍の人が鑑賞したことになります。
次回の開催は?
次回は2020年開催で検討中。
当初からトリエンナーレ式を検討していたことから、2017年の次は2020年となる。
※トリエンナーレ:イタリア語で3年に1度を意味し、3年に1度行われる国際芸術祭のことをいう。
当然、2回目の開催に対する批判はあります。
- 助成金を通じて、税金が使用されることに対しての是非。
- 珠洲市内での宿泊者は芸術祭に訪れた人の約6割にとどまり、経済効果が限定的。
- 安易にアートを利用することによる、アートの質の低下への懸念。
- 今や日本全国で乱立気味になっている芸術祭そのものへの批判。
などなど。
懸念や批判の意見は、確かにその通りだし、こういった批判の目を向ける必要は絶対にあると思います。
ただ、個人的には、数回開催するまでは是非の判断をしないで欲しい。
今は経済効果や採算ベースを考慮しないといけないということは理解できます。
でも、芸術に対して、費用対効果を強調するのは、何か違和感を覚えます。
本来、芸術は価値を付けることが出来ないから芸術なのではないかと。
2017年に開催された奥能登国際芸術祭で、僕は
「もう少し見ていたいな。」
と感じる作品に出逢うことが出来ました。
多分これは、僕と作品との相性で、数字や理屈で説明できない。
でも、僕がその「もう少し見ていたい」と思った作品の良さは、他の人とは共有は出来ない。
なぜなら、その人と僕が歩んできた人生や出逢ってきた人が全く違うから。
これと同じように、奥能登国際芸術祭は、あなただけの「こう少しみていたい」作品を見つけられるかも知れない。
珠洲市という独特の環境だからこその芸術祭での、「もう少しみていたい」作品と出逢えるチャンスを簡単に無くして欲しくないんだ。
今回の奥能登芸術祭では、準備や運営を行う登録サポーターの他に、サポーター登録していない展示会場付近の住民が自発的に準備などを行っていたことも印象的でした。
僕の知っている人も、勝手に(?)会場の経路案内を行っていました。
それが、非常に楽しそうで、まるで一昔前の小学校の運動会で、父兄が勝手に手伝っているのと同じ状態。
きっとそのことが、僕の中で苦手意識があった芸術鑑賞のハードルを軽々とクリアさせてくれた理由のひとつだと思う。
地元の人が自発的に協力している限りは継続して欲しいと個人的には思います。
地元が何かをしようとするのをもう少し暖かい目で見ても良いんじゃないかな?
それくらいの余裕や寛容さを我が国は持っていると信じます。
あなたにも奥能登の珠洲市で、多くの「もう少しみていたいな」という作品に出逢う機会が続いて欲しいと願います。
今も見ることが出来る奥能登国際芸術祭作品
2017年に行われた奥能登国際芸術祭ですが、今も鑑賞することが出来る作品があります。
機会があれば、鑑賞してみては如何ですか?
常設されているのは以下の4作品で、元の場所で展示が3作品、移設展示が1作品です。
作品名:Something Else is Possible/なにか他にできる
アーティスト:トビアス・レーベルガー
場所:蛸島地区/旧蛸島駅
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作品名:うつしみ
アーティスト:ラックス・メディア・コレクティブ
場所:上戸地区/旧上戸駅
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作品名:珠洲海道五十三次
アーティスト:アレクサンドル・コンスタンチーノフ
場所:珠洲市内4か所のバス停に点在
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作品名:Drifting Landscape
アーティスト:リュウ・ジャンファ
場所:珠洲市立珠洲焼資料館
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2018年秋限定公開:奥能登国際芸術祭作品
常設展示作品以外に、不定期で公開される作品があります。
屋内作品の5作品が2018年秋に限定公開されます。
2018年秋限定公開概要
公開日:2018年9月22日~10月8日の土日祝(合計8回の公開)
時間: 9:30~16:30
鑑賞料金
- 1作品:一般300円 / 小中高生200円
- 共通券:一般1,200円 / 小中高生800円(全5作品を見るなら、1作品分お得)
作品名:時を運ぶ船
アーティスト:塩田千春
場所:旧清水保育所
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作品名:小さい忘れもの美術館
アーティスト:河口龍夫
場所:旧飯田駅
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作品名:スズズカ ※芸術祭後初公開
アーティスト:ひびのこづえ
場所:旧飯塚保育所 ※注意!:イベント開催時には入場不可。
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作品名:魚話 ※芸術祭後初公開
ごめんなさい。映像作品の為、画像はありません。
アーティスト:さわひらき
場所:旧日置公民館
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作品名:静かな海流をめぐって
アーティスト:金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム(スズプロ)
場所:珠洲市飯田町の古民家
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まとめ
僕は元々は芸術に苦手意識がありました。
奥能登国際芸術祭では、難しいうんちくを知らなくても芸術を楽しめました。
2020年に予定されている次回開催を是非、叶えて欲しいところです。
芸術は好きなように見ればいい、決まった答えなんかはない、ということに気づかせてくれるきっかけになった芸術祭をみんなに鑑賞してもらいたいものです。