金沢の武家文化の代表的な観光スポットと言えば、金沢城や兼六園。
また、長町の武家屋敷跡も加賀藩士や中級武士の屋敷跡が残り、その風情が人気の観光スポットとなっています。
ただ、長町武家屋敷跡では、庭園や再現された門などは見ることは出来ますが、実際に現在も人が住んでいたりします。
その為、長町の武家屋敷跡には藩政時代の武士の住まいの様子を見ることが出来る武家屋敷は存在しません。
今回紹介するのは、金沢城での表玄関である大手門があった大手町という場所にある武家屋敷。
その武家屋敷は、寺島蔵人(てらしまくらんど)邸と言います。
ある意味で金沢市唯一の武家屋敷で、実際に中に入ることも出来ます。
武家屋敷を公開しているのは、実は金沢では寺島蔵人邸が唯一
金沢で武家屋敷と言えば、長町の武家屋敷や野村家が有名。
特に野村家はミシュランで観光地格付け2つ星を獲得して以降、一躍外国人観光客も訪れるメジャースポットになりました。
ただ、実際の野村家の建物は、明治時代の武家制度の崩壊に伴い、庭園や塀等の一部を残して取り払われています。
現在の野村家の建物は、加賀大聖寺の北前船オーナーであった「久保家」の離れを移築したもの。
その為、現在の野村家は正確な意味では、藩政時代の武家屋敷ではないのです。
だからと言って、野村家のすばらしさを損なうものではありませんので、野村家も是非楽しんでください。
一方の寺島蔵人邸は、建物は完全に取り払われることなく、蔵人の子孫が1988年まで暮らしていました。
築年数はなんと、約240年!
藩政時代の中級武士の住まいの様子を伝える旧家と庭園を公開している武家屋敷は金沢市で唯一、寺島蔵人邸だけです。
ただし、寺島蔵人邸も建物の半分は明治時代に取り払われています。
一部は改築されていますが、現存するのは、家族が暮らした旧奥座敷と庭園です。
武家屋敷 寺島蔵人邸の中って、どんな感じ?
寺島蔵人は、加賀藩の中級武士でした。
武士と言えば、質素な生活を思い浮かべるかもしれません。しかも、中級クラス。
が、寺島蔵人邸は、そんな武士の質素な生活のイメージとは若干異なり、それなりの広さをもった住まいと手入れがされた美しい庭園が特徴。
中級武士とは言え、加賀百万石の藩士の風格をただよわせています。
建物は2階建てですが、2階は安全上の理由で非公開。
公開されている1階でみることが出来るのは、
- 13畳半の座敷:蔵人の掛け軸(作品保護の為、レプリカ)が掛けられている
- 展示室:寺島家の所蔵品、蔵人の書画、金沢ゆかりの文化人の作品を展示
- 4畳の間:浦上玉堂が琴を弾いたとされる間
- 5畳の茶室:抹茶を頂けます(有料)
建物から降りて、乾泉と名付けられている庭園も散策出来ます。
寺島蔵人の才能に嫉妬・寺島家所蔵品にため息
展示室では、蔵人が描いた山水画・竹石図などが展示されています。
蔵人は財政と農政の実務家として非常に優秀でした。
優秀であったがゆえに、教諭方(きょうゆかた)と呼ばれる加賀藩の藩政改革を行う藩主直属の機関の一人として、他の人たちを差し置いて取り立てられています。
行政の手腕だけでなく、芸術分野にも深い知識と技術を持った蔵人の作品を見ていると、その才能に軽い嫉妬を覚える程。
また、蔵人自身の作品だけでなく、使っていた絵具や武具も展示。
展示品は定期的に入れ替えが行われます。
寺島蔵人は山水画・竹石図を多く残しています。
が、個人的に是非見て欲しいと思うのは、山水画や竹石画ではなく、牡丹(ぼたん)を描いた「牡丹折枝図」。
この絵画も寺島蔵人を代表する絵画のひとつです。
江戸時代に描いた牡丹の青が、現代でも信じられないくらい生き生きとしているのには、思わずため息が出ます。
地元メディアに毎年取り上げられる庭園
寺島蔵人邸には「乾泉(けんせん)」と名付けられた池泉式庭園があります。
ただ、池には水がありません。
この水がない池を由来として、庭園の名前が「乾泉」と名付けられています。
※池泉式庭園:江戸時代の庭園様式。池を中心に配し、その池の周りを巡りながら鑑賞する。兼六園が代表的な池泉式庭園
寺島蔵人邸の庭園は、樹齢300年以上と言われる満天星躑躅(ドウダンツツジ)が非常に有名。
春の開花時には、毎年地元メディアが取材に訪れる程。
ドウダンツツジ以外にも、200本を超えるといわれるツバキ・モミジ等があり、四季ごとの花木を楽しむことも出来ます。
中級武士でも、加賀藩ではここまでの庭園が持てたのかという驚きも感じてもらえると思います。
武家屋敷で武士のたしなみを疑似体験
武士のたしなみとして、茶道は欠かすことが出来ません。
特に加賀藩では、武士だけでなく町人もお茶をたしなむ程、広がりました
加賀藩の中級武士であった寺島蔵人邸にも当然のように茶室があります。
庭園の名称「乾泉」から名前を取り、「乾泉亭」と言います。
その茶室で、有料で抹茶を頂くことが出来ます。
(呈茶料:300円/ひとり)
頂く茶碗は、金沢に古くから伝わる大樋焼。
添えられる干菓子は、寺島家の家紋が入った落雁です。
茶室の入り口は、室内側、庭園側とも貴人口である為、茶室内は少し明るめ。
本格的な茶の湯ではありませんが、武家屋敷でお茶を頂くという、武家のたしなみを疑似体験することが出来ます。
寺島蔵人邸のおすすめ時期
春のドウダンツツジ・初夏の新緑・秋には紅葉・冬の雪景色と四季折々の風景を楽しむことが出来ます。
なかでも、やはり春のドウダンツツジが花開く時期と秋の紅葉の時期がおすすめ。
また、寺島蔵人邸では2016年から、「金沢ナイトミュージアム」として、夜間開館を行う時期があります。
ドウダンツツジの開花時期に合わせて夜間開館されます。
普段入れない夜間の寺島蔵人邸も楽しめます。
まとめ
いかがでしたか?
寺島蔵人邸は、金沢市で唯一、公開して、実際の加賀藩士の住まいの中を見ることが出来る貴重な武家屋敷。
武士の暮らしぶりを垣間見るだけでなく、絵画などの美術品・美しい庭園と同時にいくつも楽しむことが出来ます。
加賀百万石の中級武士の風格を是非、体験してください。
寺島蔵人邸を体験して頂き、金沢を好きになって頂ければと思います。
武家屋敷 寺島蔵人邸開館時間・料金・アクセス
【開館時間】 9:30~17:00(入館は16:30まで)
※ナイトミュージアム開催時は17:00~20:00まで(入館は19:30まで)
【休館日】 12月29日~1月3日
※展示品整理の為、臨時休館あり。
【入館料】 一般300円 高校生以下無料
※利用可能クレジットカードあり
※「いしかわ観光旅ぱすぽーと」提示で50円引
※65歳以上・障がい者手帳をお持ちの方及びその介護人200円(祝日は無料)
【抹茶料】 300円(干菓子付き)
【駐車場】 なし
【バスでのアクセス】
- 北陸鉄道バス 金沢学院大学方面行き:「橋場町」バス停 下車徒歩5分
- 城下まち金沢周遊バス(右回りルート):「橋場町(金城樓前)」バス停 下車徒歩5分
- 金沢ふらっとバス(此花ルート):「町民文化館」バス停 下車徒歩7分
【住所】 金沢市大手町10番3号
【TEL】 076-224-2789
【地図】